USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか | 一般社団法人 中部品質管理協会

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USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は、2001年、大阪に作られたハリウッド映画のテーマパークである。当初、年間1000万人/年の来場者を誇ったが、2009年700万人と低迷した。テーマパークは、厳しい競争にさらされる集客アイディアの実験場である。その苦況から2012年に1000万人とV字回復を達成したが、その立役者が、著者、森岡毅氏である。森岡氏は、2010年、P&GのブランドマネジャーからヘッドハンティングでUSJのマーケティングオフィサーに就任、人を感動させるために、次々とアイディアを発想して打ったイベントが次の内容である。

①先端技術で、10周年のハッピーライブ「ワンピース・プレミアムショー」、②東日本大震災の後、日本を元気にするため、子供の料金をタダにする「スマイル・フリーキッズ」、③ゾンビが現れるコワ恐ろしい空間を作った「ハロウィン・ホラーナイト」、④カプコンのゲームソスト「モンスター・ハンター」のイベント化、⑤子供向けのエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」、そして本のタイトルにある「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライト-バックドロップ-」である。

これらのイベントが生まれてきた体験を詳しく解説しているが、その背景にあるノウハウとして、次のイノベーション・フレームワークの技法を紹介している。

1.フレームワーク 目的(命題の明確化)、戦略(テーマ実現のための必要条件を列挙して経営資源を何に集中するかを決める)、戦術(具体的な実現方法)の手順による戦略的フレームワークと、因果関係を分析し、ロジカルに問題の本質をつかみ、可能性に辿りつくための数学的フレームワークがある。

2.リアプライ 人のアイディアを活用したり、それをベースにして新たな価値を創出する。リアプライの利点は、成功例があることから、成功確率が高い、アイディアの実現スピードが速い、アイディアの引き出しが増えることにある。

3.ストック(幅と深さ) 目的意識をもってエンターテイメントの集客、プロダクトのアイディアを集め、ストックしておく。個人のストックだけでなく、組み合わせのアイディアを作るためにチームとしてのストックも重要である。

4.コミットメント どれだけ必死になって考えるか、考えつくまで考え抜く。ジェットコースターのアイディアは、熟慮の末、逆回転再生されているシーンが夢に現れた。アイディアの神様は、地球上で最も必死に考えている人のところに降りてくる。

最後に、アイディアは実現させないと意味がない。戦術の詰めに、細心の注意を払うことが大切である。

UFJでは、消費者理解のマーケティング力、エンターテイメントのための技術力、テーマパーク設備投資のためのマネジメントノウハウを培ってきた。2014年夏には、450億円を投資した、ハリーポッターのテーマパークが実現する計画である。

「マーケターは消費者を理解せよ」、「答えは現場にある」、「何でも自分でやってみる」、「絶対にあきらめずに行動する」、といったマーケティングの信念と技法のエッセンスが自らの体験から語られており、参考になる。       (杉山 哲朗)